2012年9月28日金曜日

忙しいときこその養生法

女心と秋の空とは、よく言いますが、
本当に目まぐるしい天気に、身体が疲れたと悲鳴を上げてる人が多いようです。

一日のうちで10℃も変化すると、その変化の大きさに、身体がついていけず、
暑さで開きっぱなしになっている毛穴から、冷えや風がはいって身体の中で悪さをして、
大風邪を引いたり、ぎっくり腰になったり。

そうかと思えば、また急に暑くなって、やっとしまった毛穴が今度は熱を放散できずに、
のぼせたような感じになったり。

冷たいものは下に、熱いものは上に上がるのは体内でも一緒で、
普段はそれをおなかの中心で、攪拌するようにエネルギーを回しているのですが、
夏の疲れでその力が弱まると、下半身は冷えが溜まり、動きが低下してしまい、
上半身は熱が上がったままで、大汗をかいたりのぼせたり。

西洋医学では、こういうい不定愁訴の原因をひとまとめに自律神経失調症などと
言ったりするようですが、東洋医学では、身体のSOS 信号だと捉えます。

身体の疲れは、その人の一番弱い部分や一番負担をかけている場所から起こります。
ひとつの不具合は次の不具合を連鎖し、身体全体の不具合を生じさせます。
ですから、身体が発するサインは、小さなものでも聞き流してはいけません。

現代人はこのような異常気象の他にも、社会の不安定、大量の情報に踊らされたり、
環境の多様化で、常に緊張して、とても疲れやすい状況にあります。

力みは、コリを生じ、コリは血やエネルギーの滞りを生みます。
血やエネルギーが滞れば、そこに古いものが溜まり、「腐り」を生みます。
そしてその「腐り」が、身体に悪影響を及ぼすのです。

ですからほんの少しの間でも、ホッとさせる時間を作ることが必要です。
でも、人間は、力を入れることは得意ですが、実は抜くことがとても苦手です。
あまりずっと力を入れていると、脱力する方法がわからなくなるようです。

そんなときは、一度ギュッと身体に力を込めます。
そして、大きく息を吐きながら、一気に力を抜きます。
その状態が、脱力した身体の状態です。
できれば床などにごろりと寝ころんでやるといいでしょう。

そして、お湯に浸したタオルを目に当てて、しばらく何も考えずにボーっとしてみましょう。
目は実はイライラととても関係が深くて、目に入った力を抜くことで、
イライラを抑えることができます。

雑念があると、身体のどこかに力が入ってしまいます。
溜まっている洗い桶の事も、山のような洗濯も、(あ、、それはうちだけですね(笑))
山積みになっている仕事も、5分だけ忘れてただぽかんとしてみてください。

ぽかんとできなかったら、青い空をイメージしましょう。
風が吹いて、白い雲がゆっくりと流れるさまをイメージして、ゆっくり呼吸をしてみます。
そうすることで全身が緩み、滞った血やエネルギーがゆっくりと動き始めるはずです。

秋という季節は、夏の活動期から、冬の休息期へと、身体が変わる準備をする期間です。
ですから、緩んでいた筋肉や皮膚が急にきゅっと締まるので、
ただでさえも身体に力が入りやすくなっています。

自分でも意識して、身体の中の流れを維持できるようにすることが大切です。
ほんの少しの合間でいいですから、試してみてくださいね。
あ、でも、お昼寝とはまた別のものです。

昼寝もおススメではありますが、短時間(20分以内)で。
1時間以上の睡眠は、脳も身体も寝てしまうので、
逆に身体がエネルギーを抑えてしまうため、
起きた時に身体がだるかったり、頭痛が起きやすくなったりしますからね。

2012年9月22日土曜日

葛根湯と痴呆症って、関係あるんですか?

先日、患者さんから「韓流の時代劇を見ていたら、認知症疑いの王様に葛根を内緒で食べさせて
判定させていたんだけど、葛根湯飲むと、認知症が進行するんですか?」と聞かれました。

確かに、そのドラマは見たことがあって、私も「え?」と思った記憶があったんですよね。
自分がよく使っている薬が、認知症を助長するなんて聞いたらびっくりしてしまいますよね。

「いつも飲んでいるから、私も痴呆症になったりしないかしら?」
ご心配はごもっとも。

でも実際、葛根湯にそんな効能(副作用?)があるなんて聞いたことないし、
どこにも書いていない。
どういうことなのかと調べてみると、他にも結構たくさん同じ疑問を持った人がいて笑ってしまいました。
で、そんな人たちの意見などを読みながら、どういうことなのかと鍼灸院で考えてみました。

葛根湯は、身体を温め発汗を促し、体表にとどまっている邪(ここでは風邪ウィルス)を体外に出します。
ですから、悪寒があり、項が硬直するような風邪の引き始めの場合に有効です。

汗を掻くのは予想以上に体力を消耗し、元々体力のない人がたくさん汗を掻くととても疲れてしまいます。
発汗は、心と腎の機能ととても関係が深く、発汗が甚だしいと、心と腎に多大な負担を掛けてしまいます。
心の機能とは、西洋医学で言えば心臓ですが、東洋医学では、血液循環の他に、精神活動(脳の活動)を司っているとされ、また、腎は西洋医学で言うと腎臓で、東洋医学では身体の中の水分の管理をするほかに、生まれながらに持っている気(生体エネルギー)を管理していて、老化と深いかかわりがあります。
痴呆の原因はさまざまで、今ここで限定することはできませんが、痴呆はこのふたつの機能の不足や不具合があると、起こりやすくなると言えます。

ですからそんな状態の人に、葛根湯で発汗を促された場合、この心と腎のエネルギーを消耗してしまうので、確かに認知症を助長してしまうかもしれません。
でも、これはあくまでも一つの可能性です。
ドラマはドラマ性を求めなくてはいけないので、根拠はあっても、それを一部分が誇張して作られるので、誤解が生じてしまうようです。
しかし、症状に合わない薬を飲めば、身体に悪影響を及ぼすというのは変わりありません。

日本では風邪と言えば葛根湯というくらいよく使われますが、どんな風邪でも効くわけではありません。
最初に書いたとおり、悪寒や鼻水、頚肩のこわばりを伴う風邪のひき始めに有効です。
身体を温める効果のある薬ですから、熱風邪には逆効果です。
単に風邪と言っても、人それぞれ症状は様々で、経過によっても変わります。
葛根湯に限らず、万病に効く薬はありません。
安易に薬に頼りすぎないで、その時々の様子に合わせてどんな薬がいいのかよく考えて飲みましょう。


2012年9月14日金曜日

暑くても秋です。


こんにちは。
9月になったというのに、相も変わらず連日容赦ない暑さが続いています。
「暑さ、寒さも彼岸まで」ということわざもあるように、
本来ならどんなに暑くても今週末くらいからはぐっと気温が下がるはずなのですが、
今日も32℃とまだまだ下がるような気配が見られません。

しかし、真上にあった太陽は、少し傾きを見せ、
空の色も、風も、少しずつ真夏とは変わってきました。
朝晩はずいぶん涼しい風が吹いて、夜は過ごしやすくなりましたね。

今年もまだまだ彼岸花は咲きそうにないですが、
それでも周りの景色も徐々に秋の準備を始めています。
出勤途中の栗林では、もうふっくらとしたいがぐり坊やが枝の間から顔を出して、
秋の訪れを教えてくれていました。

さて、景色と同じように人間の身体も、気温とは関係なく秋の準備を始めています。
真夏のような暑さでも、真夏のころとは汗のかき方も、エネルギーの消費の仕方も違います。
真夏と同じように過ごしていると、思わぬ体調不良を起こしますので注意が必要です。

エネルギーを消費して活動を活発にさせる夏から、
秋は、これから来る冬に向けてエネルギーを貯めこむ身体に変わっていきます。
ですから、身体の代謝も自然と抑えられるので、
汗もさらりとした汗からべっとりとした汗に変わります。

これは、身体が貯めようとしているエネルギーからできた水分で、
貯めこむ筈のエネルギーを消費しているということです。
ですから、激しい運動や暑さで汗を大量にかいてしまうと、
エネルギーの貯蓄が不足してしまいます。

また、秋の風は乾燥を運んできますから、さらりとした気持ちのいい風を感じながらも、
知らず知らずのうちに水分を奪われています。
体表の水分は、体温調節のほかにも外気から、身体を守る働きを持っています。

ですから、この時期に暑いからといって肌を露出していると、
体内に秋の風の侵入を簡単に許してしまい、風邪を引きやすくなります。

ただでさえ季節の変わり目は、身体ががらりと変わるので負担のかかる季節なのに、
この異常気象で、更に身体には負担がかかっています。
そして、身体の状況も暑さの性質も変わっていますから、
必要以上にエネルギーを浪費してしまいます。

暑いからといっていつまでも夏と同じ過ごし方をせず、
肌を露出して熱を放散する対処法から、
肌着やタオルを肌に当てたり薄手の長袖などで、外気から体表を守る対処法に変えましょう。