実りの秋、食欲の秋です。
クマが冬眠をする前に、冬を越すためのエネルギーを貯め込むように、
私たちもこれから来る冬に備えて、エネルギーを取り込むために,食欲が増すのは当然のことです。
しかし、昔と違って、今は飽食の時代。
冬になったからと言って、食料が不足する訳ではありません。
ですから、本能の赴くままに食べてしまうと、大変なことになってしまいます。
東洋医学では、元々、食事とは、「生きるためのエネルギーを取り込むこと」です。
ここで言う「エネルギー」とは、生命力、つまり「気」です。
食物の成分や栄養を考える前に、食物とは「自分以外の生命体」の「気」=エネルギーです。
そして、その生命体のエネルギーによって、いろんな性質があります。
夏の食べ物は、夏の暑さを乗り越えるために必要なエネルギーを持っています。
また、秋の食べ物は、これから来る厳しい冬を乗り越えるために必要なエネルギーを持っています。
ですから、「旬の食べ物」を摂ることは、自然界のサイクルを生きるうえで、とても大切なことです。
しかし、今は、季節など関係なく、さまざまな食材が出回っています。
また、四季のない遠い場所の食べ物も、発達した流通のおかげでいつでも食べることができ、
旬の食材が、なんなのか、知らない人のほうが多いような気がします。
おいしいものをいつでも食べられるようにと言う、人間の知恵と技術の集大成なのでしょうが、
自然のサイクルや、身体が必要としているものを無視して、嗜好重視で摂取するのは、
生物としての人間を考えた時に、あまりいいことではないような気がします。
たとえば夏の代表、スイカは、身体の熱を外に出す性質を持っています。
夏の暑い時、身体に籠った熱を外に出すためは、とても効果的な食べ物です。
中国では、スイカは熱が出た時に食べる食べ物だそうです。
すると、発汗や利尿作用が促進されて、解熱を助けてくれます。
それを、寒い冬に食べたらどうでしょう?
身体の中に貯めておかなければならない熱をみんな身体の外に出してしまうので、
身体を冷やしてしまうことになります。
また焼き芋や、おでんの大根、これから寒くなると、とてもおいしいですよね。
根菜は、身体を温める性質を持っています。
だから、熱を身体に貯めておきたい冬には、とてもおいしく感じるのです。
反対に、夏の暑い日には、欲しいと思いません。
「おいしい」という感覚は、本来、食べ物の「気」の性質が、自分の身体に必要かどうか認識するための感覚です。
夏に食べるスイカの味と、冬に食べるスイカの味。
どんなにスイカが好きな人でも、比べた時に、「おいしい」の度合いが違うのはわかるはずです。
嗜好や、栄養学的に必要だと、頭で考えたりせず、
季節によって身体がそのときに本当においしいと思うものを、
必要な分だけ摂ることが、健やかに季節を過ごす秘訣といえます。